離婚後の子の養育に関する民法等改正について

更新日:2025年12月24日

父母の離婚後の子の養育に関するルールの改正について

『法改正の概要』

父母が離婚後も適切な形でこどもの養育に関わりその責任を果たすことは、こどもの利益を確保するために重要です。2024年(令和6年)5月に成立した民法等改正法は、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、こどもを養育する親の責務を明確化するとともに、親権、養育費、親子交流などに関するルールを見直しています。

この法律は、2026(令和8)年4月1日に施行されます。

 

1.親の責務に関するルールの明確化

Point

父母が、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養育する責務を負うことなどが明確化されています。

【こどもの人格の尊重】

父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもの心身の健全な発達を図るため、こどもを養育する責務を負います。その際には、こどもの意見に耳を傾け、その意見を適切な形で尊重することを含め、こどもの人格を尊重しなければなりません。

 

【こどもの扶養】

父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを扶養する責務を負います。こどもが親と同程度の水準の生活を維持することができるようなものでなければなりません。

 

【父母間の人格尊重・協力義務】

父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもの利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければなりません。次のような行為は、この義務に違反する場合があります。

●父母の一方から他方への暴行、脅迫、暴言等の相手の心身に悪影響を及ぼす言動や誹謗中傷、濫訴等

●別居親が、同居親による日常的な監護に、不当に干渉すること

●父母の一方が、特段の理由なく他方に無断でこどもを転居させること

●父母で親子交流の取決めがされたにもかかわらず、その一方が、特段の理由なく、その実施を拒むこと

など

 

【こどもの利益のための親権行使】

親権(こどもの面倒をみたり、こどもの財産を管理したりすること)は、こどもの利益のために行使しなければなりません。

 

2.親権に関するルールの見直し

(1)父母の離婚後の親権者

Point

父母の離婚後の親権者の定めの選択肢が広がり、離婚後の父母双方を親権者と定めることができるようになります。

 

父母の婚姻中は父母双方が親権者ですが、これまでの民法では、離婚後は、父母の一方のみを親権者と定めなければなりませんでした。

今回の改正により、離婚後は、共同親権の定めをすることも、単独親権の定めをすることもできるようになります。

 

【親権者の定め方】

協議離婚の場合

父母が、その協議により、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定めます。

父母の協議が調わない場合や裁判離婚の場合

家庭裁判所が、父母とこどもとの関係や、父と母との関係などの様々な事情を考慮した上で、こどもの利益の観点から、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定めます。

次のような場合には、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。

●虐待のおそれがあると認められるとき

●DVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき

 

【親権者の変更】

離婚後の親権者については、こどもの利益のため必要があると認められるときは、家庭裁判所が、こども自身やその親族の請求により、親権者の変更(父母の一方から他の一方/一方から双方/双方から一方)をすることができます。

 

(2)親権の行使方法(父母双方が親権者である場合)

Point

父母双方が親権者である場合の親権の行使方法のルールが明確化されています。

1.親権は、父母が共同して行います。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他方が行います。

2.次のような場合は、親権の単独行使ができます。

●監護教育に関する日常の行為をするとき

●こどもの利益のため急迫の事情があるとき

日常の行為に当たる例

(単独行使可)

日常の行為に当たらない例

(共同行使)

・食事や服装の決定

・短期間の観光目的での旅行

・心身に重大な影響を与えない医療行為の決定

・通常のワクチンの接種

・習い事

・高校生の放課後のアルバイトの許可

・こどもの転居

・進路に影響する進学先の決定
(高校に進学せずに就職するなどの判断を含む)

・心身に重大な影響を与える医療行為の決定

・財産の管理(預金口座の開設など)

急迫の事情(単独行使可)

父母の協議や家庭裁判所の手続きを経ていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害するおそれがある場合をいいます。

・DVや虐待からの避難をする必要がある場合
・こどもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合 など

 

3.特定の事項について、家庭裁判所の手続で親権行使者を定めることができます。

父母が共同して親権を行うべき特定の事項について、父母の意見が対立するときは、家庭裁判所が、父又は母の請求により、父母の一方を当該事項に係る親権行使者に指定することができます。

※改正前は、1.のみが規定されており、2.と3.については規定がありませんでした。

※その他、具体的な内容については、法務省:Q&A形式の解説資料(民法編)(外部リンク)をご確認ください。

(3)監護についての定め

Point

父母の離婚後のこどもの監護に関するルールが明確化されています。

【監護の分担】

父母が離婚するときは、こどもの監護の分担についての定めをすることができます。この定めをするに当たっては、こどもの利益を最も優先して考慮しなければなりません。

 

【監護者の権限】

離婚後の父母双方を親権者とした場合であっても、その一方を「監護者」と定めることで、こどもの監護をその一方に委ねることができます。
このような定めがされた場合には、「監護者」は、日常の行為に限らず、こどもの監護教育や居所・職業の決定を、単独ですることができます。

 

3.養育費の支払確保に向けた見直し

Point

・養育費の取決めに基づく民事執行手続が容易になり、取決めの実効性が向上します。

・法定養育費の請求権が新設されます。

・養育費に関する裁判手続の利便性が向上します。

 

【合意の実行性の向上】

これまでの民法では、同居親と別居親の間で養育費の支払を取り決めていたとしても、別居親が養育費の支払を怠ったときに別居親の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書、審判所などの「債務名義」が必要でした。
今回の改正により、養育費債権に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与されるため、債務名義がなくても、養育費の取決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差押えの手続を申し立てることができるようになります。先取特権が付与される養育費の額は、今後、法務省令で定められる予定です。なお、改正法施行前に養育費の取決めがされていた場合には、改正法施行後に生ずる養育費に限ってこの改正が適用されます。

 

【法定養育費】

離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから引き続きこどもの監護を主として行う父母は、他方に対して、一定額の「法定養育費」を請求することができるようになります。

 

【裁判手続の利便性向上】

・養育費に関する裁判手続では、各自の収入を基礎として、養育費の額を算定することとなります。そこで、今回の改正では、手続をスムーズに進めるために、家庭裁判所が、当事者に対して収入情報の開示を命じることができることとしています。

・養育費を請求するための民事執行の手続においては、地方裁判所に対する1回の申立てで一連の手続を申請することができるようになります。

4.安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し

Point

・家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行うこと(試行的実施)に関する制度が設けられています。

・婚姻中の父母が別居している場面の親子交流のルールが明確化されています。

・父母以外の親族(祖父母等)とこどもの交流に関するルールが設けられています。

 

【親子交流の試行的実施】

家庭裁判所は、調停・審判において、こどもの利益を最優先に考慮して親子交流の定めをします。今回の改正では、その調査や調整に当たって実施する親子交流の試行的実施に関する制度を設けています。

 

【婚姻中別居の場合の親子交流】

今回の改正では、婚姻中別居の場合の親子交流について、次のようなルールを明らかにしています。

1.婚姻中別居の場合の親子交流については父母の協議により定める。

2.協議が成立しない場合には、家庭裁判所の審判等により定める。

3. 1.や2.に当たっては、こどもの利益を最優先に考慮する。

 

【父母以外の親族とこどもの交流】

今回の改正では、こどもの利益のため特に必要があるときは、家庭裁判所は、父母以外の親族とこどもとの交流を実施するよう定めることができることとしています。

 

 

 

 

改正法の詳細については、法務省のホームページに掲載していますのでご確認お願いします。

法務省:民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕 (moj.go.jp)(外部リンク)