ある一門が首里(しゅり)から喜名(きな)に移って来ました。その家の娘がとても美人で、名前を翁長(おなが)マジルといいました。大そう美人と評判で、首里(しゅり)からも若い侍が、マジルを見たい、会いたいと、喜名に通って来たほどです。
しかしマジルは「私は田舎者で首里(しゅり)の人とは釣り合わないし、これから首里(しゅり)に嫁ぐわけにはいかない」と逃げ隠れしていました。
マジルが美人だという評判は沖縄中に広がっていきましたが、自分こそが沖縄で一番の美人だと思っている北谷(ちゃたん)モーシーが「翁長マジルと美人勝負をしたい」といって出かけてきました。
マジルは母親から「あなたは容姿もきれいだから、きれいな着物を着て勝負してきなさい」と言われましたが、マジルは「嫌だ」と言って普段着で髪も洗いざらしのままで出ていきました。家から出てきたマジルを見た北谷(ちゃたん)モーシーは、最初「あれが翁長マジルか?」と見ていましたが、マジルが近づいてくるうちに「この勝負に私が勝てる自信がない」と言って逃げ去ったということです。